June 21, 2019

私と女優と人生とVol.13「ジェーン・バーキン」

無造作スタイルと勇気の関係 ジェーン・バーキンの場合

どれだけ“無造作にみえるか”と、外出前にネクタイを何度も巻きなおした紳士が、
ファッション史上にいるそうだ。
紳士には「完璧な無造作」作りに熱中できる階級の誇示が感じられる。
が、今日の女優は人生そのものを「完璧な無造作スタイル」にした女性、ジェーン・バーキン。
あのエルメスのバッグ「バーキン」のジェーンだ。

私には相棒の彼S・ゲンズブールがあっての彼女だった。
が、今一度70歳も過ぎたジェーンの変容を辿ってみると、
「若い頃だけ」「ゴシップ的に取り上げられて流行になっている時だけ」では決してなく、
現在でも、オリジナルスタイルを歳重ねるごとに変容させていき、
誰にでもできそうなのに決して真似出来ないレベルの着こなしを、“無造作に”成熟させている。

女優・歌手ではあるけれど、それ以上に存在そのものが魅力的な女性。
これぞ憧れの最高峰。なぜそんなことができるのだろうか。
ふと、若きある日の自分を思い出した。
ファッション上でのコーディネートとは、トップスとボトムの合わせ方だと思っていたあの頃、
それが「持って生まれた身体と服や小物の合わせ方」だと知り、
自分がいかに幼かったかを恥じたと同時に、一瞬にしてファッションの視野が開けたのだ。

『コーディネートとは、自分の持って生まれた身体や声質、生活感や出会いや運命、そんな“自分の持っている変えられないもの”を、服や小物やアクセサリーで整えていくこと。アイテムの選び方や組み合わせ、合わせるバランスや配色によって、生まれ持った変えられないものを魅力的に表現していくこと』

オリジナルスタイルとは、変えられない何かに抗って構築していくのではなく、
自分の全てを受け入れてなお“整えながら”作っていくもの。
それができたなら、人生も恋愛もルールが変わって、重ねる歳月の全てが自分流になって、
新たな自由と自信が得られるのかも。

 

ジェーン・バーキンの「完璧な無造作スタイル」は、こうしてしなやかに仕上がってきたものなのだ。
受け入れるも欲を捨てるも、勇気が必要なのである。

Text :  IkukoSuzuki

Illustration :  935