December 20, 2019

私と女優と人生とVol.15「ソフィア・ローレン」

忘れられない瞳の秘密 ソフィア・ローレン

一本の映画で、物事の意味が全く違ってしまう、そんな経験をしたことはありますか?

夏の季語のひとつ「ひまわり」。子供時分、物事の意味はひとつで、それらを暗記していくことが学びだと信じていた頃、ソフィア・ローレン主演の名作『ひまわり』を観た。それ以来ひまわり畑は私にとって、哀愁の象徴となった。つまり映画を“理解”ではなく“感じ”、その時から、大人になるとは、成熟するとはきっと、“ひとつの物事にたくさんの意味を見つけることができる”、そんな経験をしていくことなんじゃないかと、修正したのである。

そんな思考の成長を助けてくれるのも、名画の醍醐味。スクリーンの中で人生を表現する役者たちは、立ち姿で、微笑みで、しぐさで、眼差しで、口調で、人物の側面とはこんなにも奥深いものなのだと教えてくれる。日常使っている頭では、理解できないくらいの情感を心に深く刻んでくれる。

大きな口で、大きすぎる胸で、大胆な泣き叫びで、じっと耐える眼で。私にとってのソフィア・ローレンは、随分と遠いところの、自分に無い大切なものを感じさせてくれる女優である。

しかしこんなにもあの演技が忘れられないのは、対極であっても同じ軸の上にあるのではないか、と仮定して再度観たり調べたりして驚いたのは、『Women&Beauty』(1985年本人著)の的確さ。

“「着るものが何もない」と言う人は大抵、衣装でタンスがいっぱい”
“自分の体重が気になることの問題は、体重ではなく心”
“良い会話とは、相手を学ぼうとする興味から生まれる”
“自信とは、勇気と自制心のバランスにある”
“落ち着きを持ちたいと思ったら、まず孤独を楽しむことを学ぼう。強制されたものではなく、自ら選んだ孤独は、まさに真の快楽である”
“精神とは、天然のアクセサリー”。

時代が安易になりすぎていると冒頭で書き、美とは誰にでも掴み取る事のできる価値あるものであり、その為の努力の方法と努力する価値を丁寧に書いている。すでにあの時代に。あの野性的な瞳の正体は、幾重にもなる努力と意味深さなのである。

Text :  IkukoSuzuki

Illustration :  935