「鎌高座談会」 Vol. 5

vol.5「広島に来て初めて知った“島のある海”。自然のカタチをたくさん知りたい!」

 

 

世界観の見つけ方。

 

K   あ、よく行きます。1人で。

 

鈴木  って言ってたよね。それ良いかなと。終わってから、こういう会話しようかなとか向こうがどう思ってるかなとか気にしないで没頭できるってことは自分の物差しだけで観てるでしょ。そういう経験は良いと思うのね。

 

I   今というか中学生の時にハリー・ポッターにすごいはまって、本を読んではまったんですけど。世界観も、同じになっちゃうんですけど、すごい引きこまれて、文章なんですけど、情景がすごい想像できるみたいな感じで。すごい長いんですけど、テスト期間でも関係なしに勉強よりそっちで最終巻まですごいはまって。

 

S   二人とは違ってミーハーになっちゃうんですけど、アニメーションとかを声を聞く声優さんを好きで、その顔を表に出している仕事ではないじゃないですか、声優さんて。でもなんか声だけで表現できたりとか。

 

鈴木  (Sさんに)声、可愛いものね。

 

S   いやいや、そんなことない。

 

鈴木  そういう声をさ、ふつうのコンビニエンスストアとかに行って、店員さんがすごく地味そうな女の子でも、そういう声の人とかいて、最初びっくりするじゃんと思って。

 

S   自分はそんな声とか別に自信がないので、絵とかで表現できたら。

 

鈴木  アニメとか、世界観という言葉を2人使ったじゃない?世界観があるって重要だと思うのよね。「フランス人は10着しか服を持たない」って本を知ってる?30代くらいの女性たちの人生を変えるみたいな、ちょっとベストセラーみたいな本があって。
アメリカの大学生がフランスに半年間ホームステイをしたときに、アメリカの価値観とフランスでの価値観が違うってことから色々書いてある本で、そのタイトルがフランス人は10着って本だったから皆が「えー、ほんとなの?」で、キャッチーで本当に売れたんだけど、本当はそうじゃなくてライフスタイルがこれだけ違う。要は何を重要にして生きているかってことが違うっていうことだったんだけど、その本を読んだ時に私大泣きしたんですよ。私がずっと思ってたのこれって思って。誰に言っても通じなかった。

要は、ファッション業界の人は、“服はこうやって着るんだよ”っていうファッションデザイナーを求めている。私は今、ライフスタイルの上のファッションデザイナーなんだけれど、そんな風に肩書きでは言ってないけれど、有名でないと普通と違うことは、聞いてもらえないよね。

でもその本の中には、そういうことが書いてあった。あ、これだと思って、今は私フリーでね個人レッスンとかやっているんだけど、ある意味教科書的な本になっているのね、それを見てじゃあフランスはなんでそういう風に違うんだってことがわかる本がたくさんある。小学校からとか違うんですよ。自己紹介の時に日本だと、出身地とか名前とか年齢とか言って仕事はこれやっていますみたいなこと言うでしょ。だけどその名前の次に言う、聞くフレーズがあってフランス語でね、それを何て言うかと「あなたの人生は何していますか」っていうことなの。それを職業として日本人はとっちゃうんだけど、実はそうじゃなくて、「何を重要にしてあなたは生きてる?」っていうことなのね。別に年齢とか職業とか聞かないんですよ。この人の信念は何?みたいなことなの。

で、それを出会ったその瞬間に聞くっていうこと。それがすごく重要なことであって、それはもう公、その家の中にいた子どもが外に出て、幼稚園なり小学校なり行った時から自分で考えなさい。あなたはどうしたいの?というのが教え込まれているんですよね。それをある意味言うと日本の学校体制を批判するようになることになるかもしれないけれどそうではなくて、だって机の並び方が全部違って、全て、なんで自分は今日ここに在るのかって必ず言えるようにする。だからそれは世界観よね。自分の世界観が別に順番でこうだとか何番とかそういうのじゃなくて、どこに行っても私はこうなのっていうちゃんと言えるような生き方をしているので、そう思うとやっぱり日本人が感じる世界観というのは何を見てもあるから、せっかく年をとったらそういうのがある人になりたいなと思ったのがやっぱりフランスに行った時からかもしれないし、そういうように世界観を感じる、いろんな小さなディテールのところに、主旨じゃないところでも深いところが一杯あって、そういうことを感じ取る力を皆持ってるから、ということなんだと思う。

 

 

広島と東京を行き来して見えてきたもの。

 

K   今広島の方にアトリエがあって

 

鈴木  すごく調べてるね。(皆(笑))

 

K   自分も今進路でちょっと今自分がいる場所とはちょっと違うところに興味があって、今そういう生活をしていると聞いて、どういう感じですか。

 

鈴木  私は今すごくいいいなって思ってやってるんだけど、1か月の2週間ごと広島と東京を分けているんですね。そうすると4月の広島は2週間しかいないんだけど、そこで4月分をやりたいから1カ月分のことをやらないとこっちに来れないでしょ?こっちで感じたことをまたこっちで。というと倍できる気がして。偶然なのよ、そうしようと思ってやったんじゃなくて、そういうふうにしていたらそうなって。ぼけっとするとあっという間に2週間経っちゃうから。

帰ったら大体作る。こっちではまあそうだな性格が(広島と東京では)ちょっと違って。それを2週間ごと繰り返してるっていうのはすごく良いことなの。あとそうそうずっと東京だったし、すごく普通の真面目な誰にも反抗しない女の子だったから、東京の中でやろうと思ってたでしょ。その物差しで東京モード学園の時に先生をやっていた時にね、地方からほとんど来るんです、新入生が。その初日に面接をするんだけど、そうすると、この学生広島から来ました、沖縄から来ました、とか初日よ、あんな満員電車があるなんてこと知らずに、(満員電車の)外に出ているのに押して乗って来て間に合わなきゃならないでしょ。絶対来れないっていうのに来てるってことと、「今日1日終わってどうだった?」ということ。

彼らは田舎での実家での物差し両方持ってるからすごいなあと思って。自分は東京での物差ししか持ってない。自分はすごくちっぽけだなと思って。自然を見ながら生きていくこととか、そんなの関係ないと思ってたからね。自分の収入とか何の関係ないと思ってたようなことをこの子は知ってるんだな。と内心思ってたんだけどモード学園で頑張らせるのが仕事だったから、そっちの方は言わなかったんだけど、そういうその学生の部分を尊敬しながら、こっちを頑張ろうねって話をしてたの。でも自分にはそのベースとなるこっちがあるかなあ、ないなあと思っていて、誰が見ても頑張ったねというような経歴を作るためだけをやっていて本当の私は何なんだろう。作ってないなあと思ったの。

それがじゃあ広島だったらそれがあるのかって別にそういう訳じゃないんだけど、違う所に行ったことによって、東京を外から見たり、広島をある意味今では別だと思ってるけど、見たり、今度また大阪に行ったり北海道に行ったりすると何か違うものが見れてるっていう、そういう感じがちょっとある。

あと海がね、広島はね、島があるんですよ。私こっちにいたら海は広いな、何もない水平線が海だと思ってたの。だけどそういう海なんてないんですよ。海には島がぼこぼこあって雲があってどこが水平線だか、どこまで海でどこからが雲かわからない所に生きてる。「じゃあ海を描いてね。」っていうとこれでしょって思ってた、正解じゃん、と思ってた海を多分向こうの子どもたちはそういう海を描かないと思うんです。島がこうあって、ああいう海を子どもたちが描いてたら、「何描いてるんだろう?山描いてるんじゃないの?」と思うくらい。そのくらい違うってことをすごく感じた。

 

 

K   そこでしかわからないことが。

 

鈴木  そうなのね。そう思うと自分が頑張ってるからすごいと思ってたけど、違うんだ。自分を否定する訳じゃないんだけど、その人にはその人の、皆も軸があるから、全部を尊重してあげたい。自分の話をしたいということは、相手の話を全部聞かなきゃいけない、いうようなことはね、自分にはまだまだ知らないことが一杯ある、ってことはすごく実感するの。
そういった意味では、すごく遠くに行く。そうそう考え方を急に変えようと思うのは難しいんですよ。なんか本を読んだりさ、なんか注意されて考え方変えようかなと思ってみても難しいんだって。人間の中味の話ね。だけど場所を変えちゃうの。自分の。こっちに向いてて書いてたことを、こっちに向いて書くだけで気分が変わる。思考回路がちょっと違うとか、いつもは右で取ってたものを左で飲んでみるとか、それだけで多分使う脳みそが変わって。まだ全然使ってないところが一杯あるのね、それを使ってみたい。
もしそう思うのならば場所を移動するとか、会う人を変えるとか、友だちの縁を切るとかじゃないんだけど。普通こっちが好きっぽいなあというのをやっててもいいけど、想定内の中だと思うけど、ちょっと違うことをしてみようと。してみると、あ、意外といけるんだと思って、新鮮なことがいいなと思ったり。だから別のところに行くのはいいかもしれない。

 
 
 
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